お知らせ

  • 三重県黒のり漁期前研修会開催(のり情報号外)

◎8月6日、三重海苔漁期前「研修会」開催

2022年度「三重県黒のり漁期前研修会」が8月6日に開催されたことは本紙既報の通り。講演内容は、いずれも現在直面する課題に応じたものばかりで、参加者は熱心に耳を傾けていた。前号掲載以外の各講演内容と発表者は次の通り。

①「今漁期の推進について」

三重県農林水産部・水産振興室・下村友輝氏=

まず、昨年の取り組みについて振り返った。食害対策としては、被害実態の把握、対策の検討、防除網による効果検証を実施。カモ対策として囲い網、魚類対策として下網(敷網)を試験協力者に配布したところ、9割で“効果あり”との判断があり、桑名地区では10年振りの年内生産に繋がった。今後への課題はあるものの、良好な生育が確認された。また、海の状況をリアルタイムに把握できるICT観測ブイ「うみログ」の運用試験として、設置が簡素化され、クロロフィルセンサー等が搭載された改良版が県内漁場15地点に設置されたこと。さらに、販路多様化に向け、伊曽島漁協による組合運営で委託加工体制のバラ海苔共同加工施設が整備されたことで、板海苔以外での収入の確保、労働力の負荷や経営コストの減少等の効果が出ていることが紹介された。

次に、今漁期からの推進事項として特に貧栄養対策では、平成31年から実施している県内浄化センター管理運転試験の継続や窒素、リンに対する規制基準(上限値引き上げ)の見直しをはじめ、栄養塩の増加につなげるための様々な施策、試験を講じていくことにしている。継続して食害対策については防除網の改良や敷設方法の検討、「うみログ」については色落ちの早期警戒に繋がるシステムの構築、販路多様化に向けた検討についてはバラ海苔の推進等を目指すことにしている。

講演者:下村友輝氏(左) 岩出将英氏(右)

(撮影:全国海苔貝類漁業協同組合連合会)

②「昨漁期の振り返りと今後の課題について」

三重県鈴鹿水産研究室・岩出将英主査研究員=

昨漁期の気象、海況、生産状況を振り返り、顕著な少雨となった1~2月の積算降水量は観測史上最低量だったこと。年明け以降、珪藻の増加と栄養塩の低下により多くの地区で海苔の色落ちが見られ、結果生産量も大きく減少したこと等を解説。近年、高水温化や色落ち、食害の影響が見られる中、今後の対応策として、「養殖期間の確保」と「効率的な生産量の確保」のため、次のような項目を提案している。◇高水温化=育苗開始時期、生産規模の検討・見直し。高水温耐性品種の活用。高生長品種の導入。◇色落ち=採苗密度の検討・見直し。漁場の栄養塩特性を意識した養殖計画。高水温対策=色落ち対策。人為的な栄養塩添加の検討。◇食害=食害状況の把握。食害防除の対策・検討。

 

③「三重県の第9次総量削減の方針について」三重県環境生活部大気・水環境課・国分秀樹主幹兼係長=伊勢湾の現状と課題として、水質が改善され、「きれい」になりつつあるが、貧酸素水塊の拡大や漁獲量等の減少により「豊か」にはなっていない。「海域の栄養塩類を湾内の豊かな生物生産につなげていくためには、栄養塩類の管理と藻場・干潟の保全、再生を両輪で行うことが重要」等と語った。三重県では、第9次水質総量削減計画の方針として、環境基準の達成と生物生産性・生物多様性との調和、両立の実現を目指し、従来の汚濁負荷の「削減」から、総合的な「水環境管理」への新たな方向性の導入として、(1)総量規制基準の改定。(2)下水処理場の栄養塩類管理運転の試行とその効果の検証。(3)藻場、干潟及び浅場の保全・再生等の推進に取り組む。沿岸域の関係者と連携、目標を共有しながら、きれいで豊かな伊勢湾再生に向け、計画策定を進める―等としている。

 

(終り)

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